2008年07月12日
イッツ!カッキータイム!
担当者: 寺谷カテゴリー: 近畿エリア(奈良県)
キーワード: 五條市 / 西吉野地区 / 梅干 / カッキータイム / 柿 / 果樹 / 失敗体験 / 中学校
リアクション: 0 comments | No Trackbacks | Frequency 162 times.
7/4(金)快晴+猛暑、とにかく暑い一日でした。
この日は、奈良県五條市にある西吉野中学校の取り組みを見学させていただきました。
紀伊半島の中央部、奈良盆地の南西部に位置し、すぐ隣が和歌山県の五條市は、平成17年9月25日に、五條市、西吉野村、大塔村が合併して誕生、今では奈良県内で一番大きな面積であるとか。
西吉野中学校は、2004年4月に白銀北中学校と西吉野中学校とが統合して新たに開校した学校で、市内からは少し離れた竜王山の中腹にあります。
地元の杉の木をふんだんに使った校舎はまだまだ新築の香りが芳しく、同じ敷地内の中学校の隣には西吉野小学校も双子のように並んでいました。
西吉野地区は日本有数の柿の生産地で、通っている生徒たちの家庭の多くも柿生産農家(7割以上とか)であり、その意味では農と生活がまだまだ一体化している地域だといっても過言ではないでしょう。
西吉野中学校において教育に農業体験を組み込んだ取り組みは、昭和61年、統合前の白銀北中学校の取り組みに端を発します。
統合後も、柿の生産体験をベースとした総合学習の時間を「カッキータイム」と称しながら現在まで受け継がれており、2006年「地域に根ざした食育コンクール2006」(農林水産省)において優良賞を、2007年「子どもファーム活動コンクール」(全国農業協同組合中央会)において子どもファーム・ネット大賞をそれぞれ受賞されています(子どもファーム・ネット)。
この日の「カッキータイム」は柿ではなく、2年生23人による梅干作り体験でした。
柿ではなく梅?というのも、西吉野には「賀名生(あのう)梅林」という有名な梅林があり、柿に負けないくらい西吉野は梅の生産地なのです*1。
話が前後しますが、西吉野中学校では1年生のときに柿の葉寿司作り、2年生で梅干作りと柿の脱渋実習、3年生で柿を使った創作料理実習など、中学校生活を通した「カッキータイム」プログラムが完成しているようです。
梅干作り体験学習の冒頭、担当の先生が生徒たちに「1年生のとき、なぜ柿の葉寿司を作ったのか?その理由がわかる人」という質問から始まりました。
活発な男子生徒たちから、「みんなが食べたいといったから」、「お金がなかったから」というおどけた返答のあと、「西吉野の文化を知るため」という模範解答が飛び出し、梅干作り体験がスタートしました。
実は、最初から最後まで一部の男子生徒たちが興奮気味で、なかなか作業がはかどらず、放課後になってもまだ「カッキータイム」だったということを先に書いておきます。
興奮気味だった理由は、いうまでもなくカメラを持った見知らぬ人間が同じ調理実習室にいたからです。
今回梅干作りをご指導いただいた生産者の方が、梅干作りの作業説明に先立って、青梅と梅干について簡単にお話してくださいました。

「カッキータイム」が終わったあとでご指導くださった生産者の方にうかがった話では、今年、中国からの輸入梅が70%を占めるまでに拡大しているとのこと。
昨今の日本の食糧事情と重ね合わせると、一体何が問題なのか感じずにはおれない気持ちでいっぱいになりました。
前置きが長くなりましたが、1グループ4~5人に分かれて梅干作りのスタートです。
事前に梅干作りのプロセスをまとめたプリントが準備されており、同じことが黒板にも掲示されていました。
大きく分けてこの時間でやるプロセスは梅の処理とシソの処理の2つ。
まずは、青梅と梅干になくてはならない塩の計量をそれぞれ行います。
「塩梅(あんばい)」という言葉があるほど、梅干の良し悪しには塩が重要なのです。
通常、梅の分量に対して塩の量は22%も使用するそうですが、生産者の研究の結果、今回は12%の塩分で行うことに。
ホワイトリカーでしっかりと殺菌処理をしたり、作業中もできるだけ清潔に作業すれば、塩分が低くても途中で梅が傷んだり、虫がわいたりしないそうです。
ちなみに、今回使用する青梅は、生徒のご自宅で収穫された梅だったそうです。
さすが!西吉野!
担当の先生がここで質問。
一瞬口ごもった生徒たちは、口々に「そんなん数学の問題やん!」と不満顔。
答えは、「3kg×0.12=0.36kg」ですので塩360g。
毛嫌いされる数学や理科の知識も、こういった実体験の中で使うことで意味があると感じました。
計量が終わったところで、次に青梅を洗い水気を取り、ヘタを丁寧に取ります。
ここでのポイントは、ヘタを丁寧に取ること。
ヘタ取りをおろそかにすると、カビ発生の原因になるそうです。
ヘタを取り終わった次は、梅に塩をまんべんなくまぶしながら、容器に漬ける作業になるのですが、ここでのポイントは2つ。
ひとつは、ホワイトリカーで容器(フタも)をきれいに拭いておくことで、雑菌繁殖の防止になり、失敗せずに済むということです。
もうひとつは、梅に塩をまぶすときに傷つけないようにやさしく扱うこと。
ここまで終われば、あとは容器の上部に重石を置いて、シソの処理に移ります。
シソは水洗い後に水気をしっかりと切って、2回に分けて塩もみをし、アク抜きを十分にしておきます。
塩もみは少々力仕事ですので、どのグループも男子生徒が中心にしていました。

今日の作業はここまでで、後日土用干しを3日間かけて行い、ようやく梅干が完成するということになります。
さて、「カッキータイム」中の生徒たちの様子ですが、先ほども書きましたように、男子生徒がとにかく落ち着きなく作業もそっちのけの状態でした。
黙々と作業をしていたのは女子生徒と一部の男子生徒で、参加していただいてた保護者の方が業を煮やして「そこの男子!いい加減に静かにしてください!」と叱責されるほどでした。
あえて、こんなマイナスなことを書くのも、女子生徒の男子生徒に対する対応がすばらしいと感じたからで、「もう!○○くん!ちゃんとしーや!」、「あんた!こっちの班やろ!」といいながら、パシパシと叩いて仕事をさせていました。
そんな男子生徒を見ながら同じ男として恥ずかしいとも感じましたが、中学生ともなると女子のほうが断然大人です(いや、男子が子どもです?)。
しかしながら、「カッキータイム」の締めに担当の先生が雷を落とされたのはいうまでもなく、とりわけ注目すべきは先生が「こんなことなら、もう『カッキータイム』は止めるか?」とおっしゃったときです。
一瞬でしたが、教室内の空気が変わったのを感じました。
大げさかもしれませんが、生徒たちにとっても「カッキータイム」はそれなりの重みをもって捉えられているのではないかと。
「カッキータイム」終了後、担当の先生から少しだけお話をうかがう時間をいただきまして、「今日は、ちょっと生徒たちが興奮気味でしたが、『カッキータイム』によって生徒たちが確実に成長していくのを毎年感じることができるんです」とおっしゃっていました。
ひとつひとつの取り組みだけで何か成果を出すのではなく、一連のプロセスを経験することで成長を見出すというのは、教育の原型かもしれないし、それは農業のプロセスにも似ているように思います。
また昨年度から「カッキータイム」に保護者の方たちにも参加してもらうようにし始めたそうです。
生産者の方や先生の立場だけではなく、保護者も積極的に巻き込んで、この活動を学校という狭い範囲から地域の活動として広げつつも継続していけるようにしていきたいという考えがベースにあるということでした。
一方、柿という果樹を対象とした教育ファームとしての悩みもおうかがいできました。
それは、生徒たちに失敗経験をさせてあげられないということです。
なぜなら、果樹は単発や単年度の取り組みには不向きで、種を播いたからといってすぐに生長するわけではなく、またその年の失敗が次年度の収穫を大きく左右しかねないからです。
ですから、果樹を使った他の地区でどんな風に教育ファームに取り組んでおられるのか情報交換や交流が図れたら参考になり、自分たちの取り組みももっと充実させられるかもしれないなとおっしゃっておられました。
これも非常に重要なことだと思います。
この日は、奈良県五條市にある西吉野中学校の取り組みを見学させていただきました。
紀伊半島の中央部、奈良盆地の南西部に位置し、すぐ隣が和歌山県の五條市は、平成17年9月25日に、五條市、西吉野村、大塔村が合併して誕生、今では奈良県内で一番大きな面積であるとか。
西吉野中学校は、2004年4月に白銀北中学校と西吉野中学校とが統合して新たに開校した学校で、市内からは少し離れた竜王山の中腹にあります。
地元の杉の木をふんだんに使った校舎はまだまだ新築の香りが芳しく、同じ敷地内の中学校の隣には西吉野小学校も双子のように並んでいました。
西吉野地区は日本有数の柿の生産地で、通っている生徒たちの家庭の多くも柿生産農家(7割以上とか)であり、その意味では農と生活がまだまだ一体化している地域だといっても過言ではないでしょう。
西吉野中学校において教育に農業体験を組み込んだ取り組みは、昭和61年、統合前の白銀北中学校の取り組みに端を発します。
統合後も、柿の生産体験をベースとした総合学習の時間を「カッキータイム」と称しながら現在まで受け継がれており、2006年「地域に根ざした食育コンクール2006」(農林水産省)において優良賞を、2007年「子どもファーム活動コンクール」(全国農業協同組合中央会)において子どもファーム・ネット大賞をそれぞれ受賞されています(子どもファーム・ネット)。
この日の「カッキータイム」は柿ではなく、2年生23人による梅干作り体験でした。
柿ではなく梅?というのも、西吉野には「賀名生(あのう)梅林」という有名な梅林があり、柿に負けないくらい西吉野は梅の生産地なのです*1。
話が前後しますが、西吉野中学校では1年生のときに柿の葉寿司作り、2年生で梅干作りと柿の脱渋実習、3年生で柿を使った創作料理実習など、中学校生活を通した「カッキータイム」プログラムが完成しているようです。
梅干作り体験学習の冒頭、担当の先生が生徒たちに「1年生のとき、なぜ柿の葉寿司を作ったのか?その理由がわかる人」という質問から始まりました。
活発な男子生徒たちから、「みんなが食べたいといったから」、「お金がなかったから」というおどけた返答のあと、「西吉野の文化を知るため」という模範解答が飛び出し、梅干作り体験がスタートしました。
実は、最初から最後まで一部の男子生徒たちが興奮気味で、なかなか作業がはかどらず、放課後になってもまだ「カッキータイム」だったということを先に書いておきます。
興奮気味だった理由は、いうまでもなくカメラを持った見知らぬ人間が同じ調理実習室にいたからです。
今回梅干作りをご指導いただいた生産者の方が、梅干作りの作業説明に先立って、青梅と梅干について簡単にお話してくださいました。

昔、青梅は「青いダイヤ」と称されるほど希少価値が高く、大工さんの日当ほどの値段で取引されていた時代もありました。
しかし次第に外国産の青梅が大量に輸入されるようになり、今では大きなコンテナいっぱいが1,500円ほどの値段しかつかなくなってしまいました。
私は、このままでは西吉野の梅がダメになってしまうと思い、何とかして青梅に付加価値をつけることはできないかと、この梅干作りを始めたんです。
和歌山に負けないような付加価値の高い梅干を作るんだと、今でも研究しています。
「カッキータイム」が終わったあとでご指導くださった生産者の方にうかがった話では、今年、中国からの輸入梅が70%を占めるまでに拡大しているとのこと。
昨今の日本の食糧事情と重ね合わせると、一体何が問題なのか感じずにはおれない気持ちでいっぱいになりました。
前置きが長くなりましたが、1グループ4~5人に分かれて梅干作りのスタートです。
事前に梅干作りのプロセスをまとめたプリントが準備されており、同じことが黒板にも掲示されていました。
大きく分けてこの時間でやるプロセスは梅の処理とシソの処理の2つ。
まずは、青梅と梅干になくてはならない塩の計量をそれぞれ行います。
「塩梅(あんばい)」という言葉があるほど、梅干の良し悪しには塩が重要なのです。
通常、梅の分量に対して塩の量は22%も使用するそうですが、生産者の研究の結果、今回は12%の塩分で行うことに。
ホワイトリカーでしっかりと殺菌処理をしたり、作業中もできるだけ清潔に作業すれば、塩分が低くても途中で梅が傷んだり、虫がわいたりしないそうです。
ちなみに、今回使用する青梅は、生徒のご自宅で収穫された梅だったそうです。
さすが!西吉野!
担当の先生がここで質問。
じゃー、梅3kgだっとして塩分12%ということは、塩何グラムだ?
一瞬口ごもった生徒たちは、口々に「そんなん数学の問題やん!」と不満顔。
答えは、「3kg×0.12=0.36kg」ですので塩360g。
毛嫌いされる数学や理科の知識も、こういった実体験の中で使うことで意味があると感じました。
計量が終わったところで、次に青梅を洗い水気を取り、ヘタを丁寧に取ります。
ここでのポイントは、ヘタを丁寧に取ること。
ヘタ取りをおろそかにすると、カビ発生の原因になるそうです。
ヘタを取り終わった次は、梅に塩をまんべんなくまぶしながら、容器に漬ける作業になるのですが、ここでのポイントは2つ。
ひとつは、ホワイトリカーで容器(フタも)をきれいに拭いておくことで、雑菌繁殖の防止になり、失敗せずに済むということです。
もうひとつは、梅に塩をまぶすときに傷つけないようにやさしく扱うこと。
ここまで終われば、あとは容器の上部に重石を置いて、シソの処理に移ります。
シソは水洗い後に水気をしっかりと切って、2回に分けて塩もみをし、アク抜きを十分にしておきます。
塩もみは少々力仕事ですので、どのグループも男子生徒が中心にしていました。

今日の作業はここまでで、後日土用干しを3日間かけて行い、ようやく梅干が完成するということになります。
さて、「カッキータイム」中の生徒たちの様子ですが、先ほども書きましたように、男子生徒がとにかく落ち着きなく作業もそっちのけの状態でした。
黙々と作業をしていたのは女子生徒と一部の男子生徒で、参加していただいてた保護者の方が業を煮やして「そこの男子!いい加減に静かにしてください!」と叱責されるほどでした。
あえて、こんなマイナスなことを書くのも、女子生徒の男子生徒に対する対応がすばらしいと感じたからで、「もう!○○くん!ちゃんとしーや!」、「あんた!こっちの班やろ!」といいながら、パシパシと叩いて仕事をさせていました。
そんな男子生徒を見ながら同じ男として恥ずかしいとも感じましたが、中学生ともなると女子のほうが断然大人です(いや、男子が子どもです?)。
しかしながら、「カッキータイム」の締めに担当の先生が雷を落とされたのはいうまでもなく、とりわけ注目すべきは先生が「こんなことなら、もう『カッキータイム』は止めるか?」とおっしゃったときです。
一瞬でしたが、教室内の空気が変わったのを感じました。
大げさかもしれませんが、生徒たちにとっても「カッキータイム」はそれなりの重みをもって捉えられているのではないかと。
「カッキータイム」終了後、担当の先生から少しだけお話をうかがう時間をいただきまして、「今日は、ちょっと生徒たちが興奮気味でしたが、『カッキータイム』によって生徒たちが確実に成長していくのを毎年感じることができるんです」とおっしゃっていました。
ひとつひとつの取り組みだけで何か成果を出すのではなく、一連のプロセスを経験することで成長を見出すというのは、教育の原型かもしれないし、それは農業のプロセスにも似ているように思います。
また昨年度から「カッキータイム」に保護者の方たちにも参加してもらうようにし始めたそうです。
生産者の方や先生の立場だけではなく、保護者も積極的に巻き込んで、この活動を学校という狭い範囲から地域の活動として広げつつも継続していけるようにしていきたいという考えがベースにあるということでした。
一方、柿という果樹を対象とした教育ファームとしての悩みもおうかがいできました。
それは、生徒たちに失敗経験をさせてあげられないということです。
なぜなら、果樹は単発や単年度の取り組みには不向きで、種を播いたからといってすぐに生長するわけではなく、またその年の失敗が次年度の収穫を大きく左右しかねないからです。
ですから、果樹を使った他の地区でどんな風に教育ファームに取り組んでおられるのか情報交換や交流が図れたら参考になり、自分たちの取り組みももっと充実させられるかもしれないなとおっしゃっておられました。
これも非常に重要なことだと思います。
- *1:皮肉なことに隣接する和歌山県が梅ではトップブランドなのですが
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