2008年07月08日
雨にむせぶ祝島 

担当者: 高野
カテゴリー: 中国エリア山口県
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 中国地区では唯一の離島である祝島です。「いわいしま」です。濁点をつけてはなりません。
 生まれも育ちも九州であるボクにとっては、中国地方の山の表情ですら珍しいのですが、瀬戸内海の小島はさらに異郷感という幻想が膨らみます。

 瀬戸内海というと、九州人には縁が薄い感じですが、地図で見ると大分県の国東半島からは結構近い。地勢的なところが祝島の歴史をオモシロくしてくれちゃってくれています。それについては、これから触れることもあるかと。

 今でこそ、市町村単位の細かな天気予報がありますが、以前は山口県のそれよりも大分県の天気予報を参考にしていたといいますから、祝島よ、ああ祝島よ。


 祝島への入島は、船です。当然といえば当然ですが、最近は橋が架かって“陸地”になる島も多い。橋が架かった時点で島でなくなるわけです。
 それがいいことなのか、悪いことなのかはケースバイケースですし、視座によって変化するので何ともいえないんですけどね。
 ともかく、祝島へのアクセスは1日3便の定期船が主です。ということですので、じっくり体験するには必然的に宿泊を伴ってしまいます。

 2日間のプログラム。もともとは本当に濃密で過密なスケジュールに感じました。
 時系列を無視して、項目を挙げると…。

 ●特産品のビワの収穫体験
 ●氏本牧場での牛・豚の飼育体験
 ●氏本牧場で放豚によって開墾された畑の手入れ
 ●くずビワ再活用のための新加工品試作会参加
 ●島の子どもと本土(この言葉は禁止ワードみたいだけど)の子どもの交流
 ●そのほか、食事づくりなどの合宿 etc.


 参加するのは、山口県光市を中心に活動する「光けんじの学校」の児童17人と保護者の方若干名です。
 光けんじの学校では、祝島での教育ファーム以外でも多くの体験プログラムを実施されています。祝島では、島で島外の方を受け入れての交流事業を数々行っていますが、教育ファームの軸は、光けんじの学校のみなさんとの交流です。


 さてさて、ボクが訪問した時は、あいにくの雨模様でした。けっして豪雨というわけでもなく、シトシトシトシトしょぼ降る瀬戸内の雨。曇ったり、時おり日が射したり、一転して暗雲たれ込めたりと、この2日間は天候に悩まされました。
 初日、島の方が提供してくださった「合宿所」(民家です。とある方の所有ですが、現在住んでおらず地域の方がお手入れしてくださっています。調度品などはそのまんまで、親戚の家に来たかのような錯覚を憶えました)に荷物を降ろして、まずビワを食べました。
ビワです。ビワ。

 このビワは、子どもたちが収穫体験するはずだった、ファームの隊長・國弘さんの農園のビワです。天候不順のため、國弘隊長らが先回りして収穫してくださったもの。祝島は、山がちで斜面で果樹栽培をするため、雨が降ると路面が滑りやすくてとても危険なのです。


 隊長は、空模様を見ながら何をするか? やらないべきか? の判断を下しているのですが、これってなかなかの責任ですよ。

 さてさて、島の蛭子さんちの3姉弟が合流してプログラムのスタートです。
 現在、祝島の小学校は児童数はなんと2! 来年か再来年になると3になるのですが、そう、蛭子3姉弟が全児童になるわけです。家でも学校でも兄弟一緒。
 最初は3人ともモジモジしていたんですが、数時間後にはみんなとウキャキャキャいうて遊ぶわけです。祝島の教育ファームの狙いには、こういうもくろみももちろんあるわけですね。山と海の違いがあるとはいえ、津和野町の左鐙地区と似ているんです。


 結論からいえば、この2日間は天候に翻弄され、当初予定されていた農作業はほとんど行われませんでした。
 島内では車が通行できる道が大変限られており、生徒、先生、保護者、島のスタッフ+ボクの30人近くが移動するとなると、どうしても徒歩になってしまいます。
 本来は、島の斜面の道を移動して、ビワやミカン畑の様子を見学したり、とある島人が三代に渡って営々と築き上げてきた棚田の石垣を見学したり、と移動自体が教育ファーム的だったのに。残念無念ですよ。

 そんな中、敢行されたプログラムの一つが、ビワジャム試作会です。
 祝島はビワの名産地で、山口県内のビワの大部分が祝島で栽培されています。以前は、有数のミカン産地だったようです。
 ビワは非常にデリケートな果実で、一つひとつに袋付け作業をして保護します。ちなみに、以前、光けんじの学校のみんなは袋付け体験をしました。そうやって大切にビワをそだてても、ちょっとキズがついたり変色した部分があると出荷できません。こういった「くずビワ」は、肥料にしたり、牛や豚のエサにしているのですが、あきらかにMOTTAINAI。
 だったら加工して、売ってしまおう! ということになったわけです。


 講師にジャムなどを販売している方をお招きし、保護者の方は味の販売のターゲット層ということで、味の感想をマーケティングリサーチも兼ねています。また、児童代表で2人の男子も参加して、ビワのシロップ漬けとビワジャム作り体験のスタートです。
 体験の会場は、普段水産加工をしている加工場でもって、最初は生臭かったのですが、ビワの加工をしているうちに甘い香りが漂いました。
 今回の進行役はヤマトタカシさんという、若き理論派ビワファーマー。「●●という成分が入っているから反応して色が変色するんだ!」などと難しい単語を盛り込みながら炎上する熱血青年です。スゴく研究熱心ですごいのですが、熱くなりすぎて、奥さんと子どもがポカーンとする場面もありました。
 せっかくターゲットのお母さんたちが来ているわけだし、もうちっと人妻向けトークを学んだり、子どもを手なずける術を身につけた方がよろしいかなぁと。
 ウマけりゃ売れる時代じゃないからなぁ。
 
 結局子ども2人は、シロップ漬けが終わった時点で力つきました。牛の放牧地に行って牛のブラッシングに参加しました。ジャム作り体験じたいはよろしい企画だと思います。ですが、ゲストを招聘した時点ではゲスト中心に事を進めないと。
 そういったホスピタリティとか、サービス精神が製品の売れる・売れないに直結するのではないかな、と思うわけです。

 ビワジャムは、来年度の製品化を目指すので鍋はどうする、仕入れはどうするといった実践的なシミュレーションも同時に行っておりました。
 5キロのビワがジャムになったら30%ほどになります。こういった歩留まりも計算しつつ。
 そうそう、祝島のビワを食べると、シュルッとした実の食感と濃厚な甘みに驚きます。ビワ生産者の中には、テッテ的にこだわってお手入れする人もいれば、そこまでは…という人もいます。現在は同じ祝島のビワとして出荷していますが、品質を管理してあらたなブランドを立ち上げてもいいかな、と思います。


 ジャム作り体験のかたわら、雨の間隙を縫って子どもたちは、牛の放牧地へテクテク歩きます。
 今回は、本拠地である氏本農園には出かけることができませんでしたが、島内各地で牛や豚を放牧しています。
 生月と種類の違う2頭の牛と、マキちゃんというスゴく賢い放牧犬を生きた教材にして、氏本さんは
 「この牛の違いは何かな?」
 「牛と犬の違いは?」
 「牛と人間の違いは?」
 と子どもたちに問いかけます。
 「うんちするところは? おしっこするところは?」
 という、子どもたちのツボを刺激しまくり。どちらも男の子牛だったのですが、オシッコするところをみなで探しているときに、ジョー、ドバドバと放尿してくれました。絶妙のコンビネーションでした。



 牛にブラッシングすると、目を細める様子、草とくずビワを食べた時は微妙に表情が変わったり、なんて牛の生命に触れたようです。

 夜は児童たちはみんなでカレー作りにチャレンジ。その後交流会では、蛭子姉弟のビワについての発表が秀逸でした。ビワをどう育てるのか? ビワ茶の作り方。蛭子父さんにも手伝っていただいた。
 その後、ヤマトタカシさんの話や、漁師さんの手作り木製ごまで遊んだり。まさに島をあげてのビワ・イリュージョンです。


 國弘隊長などに、祝島の特徴をおうかがいすると、祝島は離島ですがどちらかというと農業の島。瀬戸内海は交通の要衝で、そこに浮かぶ島々はいずれも重要なポイント。冒頭で大分県の天気予報を参考にしていたという話を書きましたが、祝島は現在も国東半島の伊美というところと交流があります。しかも千年を超える!
 伊美郷に京都の石清水八幡宮を御分霊しようと瀬戸内海を航行していた、伊美の船が遭難し、祝島に漂着。島人に助けられた伊美の人たちは感謝の船を出して交流がはじまった。それが4年に一度の祭り「神舞」(今年はオリンピックイヤーでもありますがカンマイイヤーでもあるんですね)という神事に引き継がれる。
 また、国東半島は瀬戸内航路で畿内と結ばれていたので、先進技術などを受け入れやすい土地柄。そこから農業の技術や種をいただいて、祝島の農業が発達した。

白い航跡の向こうに手を振る祝島のみなさんでした。

 てな具合で歴史や地勢が、農業と人柄に強く影響があるということが祝島で分かります。食べているもの、作っている作物にも物語がある。
 祝島にはおそらく、橋が架かることはないでしょうし、地元では離れ小島であることを佳しとしている気概に満ちています。地域の矜持と物語を再構築するのも教育ファームの重要な役割じゃないかと感じました。
 


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