2008年09月02日
稲刈り・・・今と昔と
担当者: 寺谷カテゴリー: 四国エリア(高知県)
キーワード: 横内 / 稲刈り / 足踏み式脱穀機 / 唐箕 / コンバイン / 農具 / 都市型 / 小学校 / 食育 / ジレンマ
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8/25(月)、天気は快晴。
この日は、高知県高知市の横内小学校5年生3クラス、約90名による稲刈りにおじゃましました。
横内小学校は、閑静な住宅地である南高台という丘の上にあり、一見すると「こんな住宅地に田んぼや畑なんてあるの?」と思われる環境ですが、そういう環境だからこそ児童たちにとって農業体験は新鮮な刺激を与えているのかもしれないと感じます。
小学校から田んぼまでは丘を下って徒歩10分ほどです。
5/1(木)に田植えをしてから約4ヶ月。
以前うかがったときには、苗がしっかり曲がっていた(笑)田んぼには稲穂が撓わに実り、初秋らしく頭上近くでは赤とんぼが無数に巡回していましたが、土佐は午前中といえどもまだまだ暑かった。
横内小学校では、昔の稲刈りと現代のそれとを体感してみようということで、半分は児童たちが鎌で刈り取りし、もう半分はコンバインで行ないました*1。
さらに、手で刈った稲は、昔の農具である足踏み式脱穀機*2と唐箕(とうみ)*3を使います。
足踏み式脱穀機は子どものときに農家の友だちの家で見たことがありましたが、唐箕は教科書くらいでしか見たことがなく、実物を目の前に少し興奮しました。
鎌で稲を刈る方法を地元の生産者の方たちにレクチャーしてもらったのち、早速稲刈りに挑戦です。
児童たちは、稲刈り班、運搬班、脱穀班の分業体制で、その役割をローテーションしていました。

児童にとって稲刈りは初体験だから「きっと手こずるだろう」という予想は外れ、意外にテキパキと稲刈りは進んで行きます。
生産者の方も「なかなか良い手つきだ」と褒めるほど(お世辞じゃないですよね?)。
ある子どもは「サクサク刈れて気持ちいい!」と、何かが憑依したような勢いで稲を刈り続けていました。
稲刈りの合間で、昔と今の農具を比較するため、実物のコンバインを見せてもらっていながら、稲を刈り取る部分には「鎌」が付いていること、内部の脱穀する回転ドラムと足踏み式脱穀機のそれとが基本的には同じ機構であることなど説明をしていただきました。
児童たち以上にメカ好きの私にはたまりません。
稲刈りが順調が進む中、脱穀班は、「お・重い」といいながら両手いっぱいに刈り取られた稲穂を抱えて脱穀する順番を待ちます。
足踏み式脱穀機は、文字通りペダルを踏んで逆V字の針金の刃がいくつも付いたドラムを回転させ、その回転するドラムに稲穂を当てて稲穂から籾を剥ぎ飛ばして脱穀する農具です。
回転するドラムの勢いに負けて稲穂ごと手を持っていかれそうになる児童もいましたけど、生産者の方たちが力強くサポート。
とはいえ、生産者の方もいまどきこのような器具を使われているわけではないので、さすがに休みなくペダルを踏み続けて「足が疲れた~」とおっしゃっていました。
脱穀された籾はふるいにかけられ、さらに唐箕を使って籾殻、軽い籾、重い籾の3つに選別されます。
この唐箕が実に優れものでした。
唐箕は、中央上部の漏斗(ろうと)から籾を落としながらハンドルを回転させ風を送り込み、その風力によって一番軽い籾殻やゴミ、あまり中身の詰まっていない籾、しっかり中身の詰まった籾がそれぞれ別々の出口から排出される構造になっています。
実演してくださったベテランの岡林さんの手元をみながら、思わず「すごい!」と声を上げてしまいました。
何がすごいかというと、唐箕は籾の重さを風力で選別するわけですから、ハンドルを回す力が強すぎても弱すぎてもうまく籾を選別できません。
右手で風車の回転数一定に保ちながら、同時に左手は漏斗から一気に籾が落ちないように弁を微妙に調節されていました。
これは、熟練した技術がいる作業ですし、ほとんど木で作られたこの器具がいまだに稼動することにとにかく驚きました。
他方、先着何名かの児童が試乗させていただきコンバインでの稲刈りも体験。
レバーひとつでアッという間に稲が刈り取られ、同時に脱穀も選別も機械の中で行なわれていきます。
調子良く手で刈っていた児童たちも、その様子を見て思わず手を止め、「あぁ~しんど」という感想をもらしていました。
さて、児童たちが鎌で手刈りし、足踏み式脱穀機で脱穀をして、唐箕を使って選別した量は、ザルに3杯ほどでした*4。

今日、児童たちが汗をかきつつ収穫した量を見ながら担任の先生が一言。
がんばって収穫してこの量をみれば少なく感じるけど、子どもたちの中には大きな収穫があったでしょう。
私もそう信じたい。
すべての稲を刈り終わり、最後に児童たちに感想や疑問などがないか先生が問いかけましたが、あまりの暑さに疲れたのか誰も手を上げる子はいません。
そこで野村先生が代わりに、「なぜ、こんなにトンボがいっぱい飛んでいるのか?」と生産者の岡林さんにたずねられ、その疑問に岡林さんは次のように答えてくださいました。

まだ稲を刈り取る前、田んぼにはたくさんのトンボやカエルがいたのはエサとなる小さな虫がいっぱいいたからです。
今はもう虫が隠れる稲穂がなくなったので、トンボの数もずいぶん減ってしまったでしょ?
人間の目には見えなくても、トンボやカエルにはよく見えている。
最近はほとんど見なくなりましたが、田んぼにはカエルを食べるヘビもたくさんいました。
トンボやカエルが食べる虫、またその虫が食べる虫、その虫が稲を食べ、人間はその虫を抑えようとする・・・・といったように、田んぼひとつとってもいろんな関係があるんです。
その話を児童たちは静かに聞いていました。
ちなみに、今日収穫したお米は、炭・ガス・電気で炊き分けてその味を比較したり、児童からの発案で米粉を使った主食やデザート作りをすることになっています。
ここからは雑感です。
田んぼまでの行き帰りにご担当の先生方からうかがった話です。
教育に農業体験を取り入れることに熱心な横内小学校ですが、ご担当の先生たちの共通の課題として、農業体験がその成果発表やイベントのためのイベントで終わってしまっている側面は否めないということ。
もちろん、イベントのためのイベントに意味がないとは言いませんが、小学校という教育現場としてはその先にある「子どもたちの成長」にどうやってつなげていくことができるのか、その工夫を私たちは考えなければならないと先生がおっしゃっていました。
稲刈りの疲れで元気なくうなだれている児童たちに、思わず野村先生は次のような発言をされたのが印象に残っています。
もう一度田んぼの様子をよく見てください。
みんなが刈り取った稲を生産者の方たちが引き続きコンバインで収穫してくれています。
私たちはある意味、おいしいところだけを体験させてもらって・・・・。
それ以上は続けられませんでしたが、野村先生が感じられているジレンマは子どもたちにもきっと伝わっていたことでしょう。
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