JAと生協のコラボレーション、そして付加価値

2008.09.29 Edu Farm 2 Comments boff 0 view
前日の雨がウソのように秋晴れ

 

9/27(土)、秋晴れ。
JA兵庫六甲 神戸北営農総合センター(以下、JA兵庫六甲)さんの稲刈りにおじゃましました。
田植えは5/31(土)、途中6月末と7月末に猛暑の中で草引きを行い、ようやく待望の収穫の日です。
JA兵庫六甲さんのひとつの特色は、生活協同組合と連携しながら、消費者と生産者が協力して「環境創造米」という独自ブランド米の交流生産活動をされている点です。
やや結論を急ぐと、JAと生活協同組合のそれぞれの目的が一致した中に、教育ファームがうまく組み込まれていると感じました。
この日の参加者は、生活協同組合連合会「きらり」エスコープ大阪のご家族あわせて130名ほどでかなりの大所帯。
当日は抜けるような秋晴れだったのですが前日に雨が降ったために、ぬかるんだ田んぼでの稲刈りとなりました。

まずはJA兵庫六甲の職員の方たちが鎌の使い方について、「稲を刈る際に、稲穂を持つ手の親指が上になるように注意してください」と説明。
念のための安全を考えて、鎌は1家族1本のみで、保護者の方に渡されていました。

さっそく、ぬかるんだ田んぼでの稲刈りがはじまりました。
自分も含めて「稲刈りは乾いた土の状態のときにするもの」だと思っていたので、長靴などを準備されていない参加者の方たちもおられ、靴まま泥の深みにはまってアッという間にドロドロ。
しかしすぐに靴は脱ぎ裸足になり泥だらけで稲刈りをされている姿を見ながら、「これって田植え?」と思わせるような状況でした。

はじめは大人たちが中心になって稲刈りをしていましたが、途中からは子どもたちも鎌を使って稲刈りにチャレンジ。
体重が軽い分、子どもたちの方が泥に埋まることなく、せっせと稲刈りに精を出しています。
勘の良い子は、刈り取った株の上ならぬかるみに足を取られないことに気がついたようです。
ただ中には、足が泥に埋まり脱出不能な状態で悪戦苦闘する子どもたちも(笑)。

小学校前の小さな子どもたちも、刈り取った稲を両手一杯に抱えて畦道を行ったり着たりしながら、その道中でカエルやバッタなどを捕まえたりして、単調な作業の中で楽しみを見つけていたようです。
そして、刈り取った稲はすぐさまコンバインにて脱穀していきました。

2反(約20a)あった稲刈りも、130名でかかれば約2時間ほどで終了。
協力していただいた生産者の方たちも、「手刈りでは終わらんと思ってたけど、こんなことならうちの田んぼの稲刈りも手伝ってもらおうかな」といわれるほど、順調に終わりました†1

ここからは雑感というか蛇足です。
まず農作業体験の参加者として、生活協同組合の方たちは間違いないなということ。
というのも、そもそも生活協同組合の方たちは食品の安全性や品質、あるいは環境に対する意識が高く、その意味で参加者のモチベーションが非常に高いと感じました。
一方、JAという組織としての目的を考えると、自分たちが取り扱う農産物がより多く販売されることが挙げられるでしょう。
はじめに「それぞれの目的が一致した」と書きましたが、JAとしては販路の維持拡大が目的であり、生活協同組合は安心・安全な食品の購入が目的ですから、非常に親和性が高いコラボレーションであると思いました。
ただ、JA兵庫六甲の田中さんに話をうかがうと、課題もあるようです。
例えば、交流生産が深まるにつれて参加者の要望も増えてくる(例えば、施設の利用など)ので、その要望にどこまで応えることができるのか?
また、参加してもらう子どもたちに、もっと自由にのびのびといろんな体験をしてもらいと思うけども、怪我や事故などを考えると結局何もさせることができなくなりそうで、そのバランスに苦慮すること。
他方、消費者と生産者の交流はあくまでも手段であって目的は実際に農産物が売れるかどうかということであり、この手段が目的に転倒してしまったとき、協力してもらえる生産者との温度差をどうやって埋めていくのかといったこと。
確かに、自分の仕事をしながら、教育ファームで取り組んだ分の田畑の管理作業に労力を割いて、その見返りがはっきりしなければ継続的に協力を得るのはなかなか難しいはずです。
とはいえ、生産者の方が、「どんな環境で、どんな人が、どんな風に作っているのか。それを知ってもらうことを通じて、地域のことも知ってもらうことが大事だ」とおっしゃっていたことは、すぐさま結果としては現れにくいですが、非常に重要なことだと思いました。

 

お母さん!ほんまの田んぼの人みたい!

 

また、稲刈りの様子を見ていて、ある子どもが稲刈りをする母親の姿を見ながら発した一言がとても印象に残っています。

 

お母さん、ほんまの田んぼの人みたい!

 

少々大げさかも知れませんが、子どもからの親に対する尊敬の念のようなものを感じ取れましたし、こういう感情はなかなか教室の机の上では育むことはできないのではないかと。
JAと生活協同組合の目的が一致する中で、それ以上の付加価値を教育ファームがもたらす可能性があるかもしれません。

Notes

  1. 最終的な収穫量は682.8kgで、生産者の方の話によると通常収穫できる1/3程度だったそうです。

Reaction

  1. mine より:

    みんなみんなに、お疲れ様でしたと笑顔で握手したい気分になりました。
    ずっとこのブログの記事を読んでいました。
    そして、幼い頃、祖母が農家だったこともありお手伝いをしていた私は恵まれていたのだと実感しました。
    覚えているのは親戚一同そろっての稲刈りです。畑でいろんな作物を採るのも見ましたし、里芋の収穫の様子は見ていただけですがとても面白かったです。ずぶずぶと、腰のあたりまで泥に入っていく祖母を見ました。
    ちょっぴり恐かったけど。
    これからの課題もさることながら、私は販売もとても重要だと思っていますし、食べ物がどのように来るのかを目の当たりにする経験は子供にとってさらに大事で、今の私の様に一生心に残っていくでしょう。
    そこで初めて「いただきます」と手を合わせることができると思いました。
    「(命を大事に)頂きます(頂戴します)」
    もちろんそこには作った人への尊敬も込めて。
    母の姿を見て言った子供の言葉、誇らしげでもありますし、また普段見れない親の労働している姿はとてもキラキラと映ったことでしょう。
    素敵な記事でした。ありがとございました。

  2. 寺谷 より:

    mineさんへ
    コメント、ありがとうございます。
    私も、生産現場を見ることはすごく大事だと思いました。
    正直いって一番影響を受けたのは、取材しているわれわれかもしれないと思うほどです。
    とある生産者で農業指導をしていただいている方が、「自分はすごく幸せだと思う。なぜなら、農作業に取り組んでいる子どもたちのキラキラした笑顔や瞳を一番間近で見ることができるから」とおっしゃっていました。
    このエピソードの全貌はおそらく後に語られると思いますけども、一連の取材経験を通じて強く感じたことは「大人が変われば子どもも変わる」ということです。
    おそらく、当記事で触れた子どもの何気ない一言は、すごく純粋な思い。
    そういう子どもたちの感性を、大切にしてあげたいと思いました。

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