6次産業化の罠

2012.07.10 Column 0 Comment boff 0 view
仔牛も疑問視?

 

先日、知人から「6次産業化」について相談を受けました。
まず「6次産業化」とは何か?ということですが、簡単に言うと第一次産業である農林水産業者が、第二次産業である食品加工、さらに第三次産業である流通販売へと事業拡大する多角的経営戦略のことで、1(第一次産業)+2(第二次産業)+3(第三次産業)=「6次産業化」と言われています。
衰退の一途をたどる第一次産業を活性化させるキーワードとして、2009年頃から「6次産業化」が頻繁に語られるようになり、農林水産省でも「6次産業化」を推進しています。

農林水産省のサイトでは「6次産業化」の先進事例も数多く紹介されていて、それらから導き出される成功パターンとしては、農業水産物のブランド化による付加価値の付与と独自の販売チャネルの開拓(直接販売やレストラン等での食材としての提供)に集約されるようです。
実際に「6次産業化」なる事業展開を通して成果を出されている第一次産業者もおられますからすべて否定するつもりはありませんが、しかし知人の相談を受けてみると、「6次産業化」はそう簡単にはいかないどころか相当リスキーな話だと思いました。
そもそも知人が農林水産業者ではないということも「6次産業化」を困難にしている要因なのですが、とにかくいかなる産業からの「6次産業化」にせよ、それなりの事業基盤がなければ「6次産業化」なる拡大戦略は自身の足元を弱体化させるに過ぎません。
専門外の領域に事業展開するということは、未知の経営資源を準備しなければなりませんし、それにはそれ相応の投資が必要になるのは想像するに難しくありません。
また知人は「6次産業化」を進める上で、「6次産業化プランナー」のコンサルティングを受けていたようです。
ですが、「6次産業化」は思いとどまった方がいいと思われる状況であっても、かなり強引に「6次産業化」を勧めてきたようです。
その理由はあくまで推測ですが、「6次産業化プランナー」自身の実績作りが主たる目的のように感じました。
「6次産業化」はまるで魔法の杖にように、衰退する第一次産業の活性化策として推進されています。
しかし実は事業を拡大するということは、業界として専門分化している事業をすべてひとりで担うということですから、当然2倍、3倍、6倍とリスクも比例して高くなるということもちゃんと抑えておく必要があるでしょう。

 

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