KJ法的な分析の実例

2013.02.27 Selfish Study 0 Comment boff 11,940 views
定性調査をさらに踏み込んで分析するには? by @boetter, on Flickr

 

定性調査で得られた情報を分析するためのポピュラーな手法のひとつとして、いわゆる「KJ法†1があります。
学校の授業や地域のワークショップなどでも頻繁に利用される「KJ法」。
今回、「KJ法」とは何か?という議論はひとまず置いておいて、とにかく実例を示しつつあくまでKJ法的に定性データの分析を行ってみたいと思います。

 

0.KJ法的分析プロセス

まずは、KJ法的分析を行う一連の流れですが、おおむね次のとおりです。

 

  1. テーマ設定
  2. 情報ソースの収集
  3. カード化
  4. グルーピング
  5. 配置・図解(いわゆるA型)
  6. 解釈・分析(いわゆるB型)

 

以下では、上記のプロセスに沿って具体例を示したいと思います。

 

1.テーマ設定

言うまでもなく、テーマ(調査目的)設定がなければ何も始まりません。
「KJ法」で期待されるアウトプットは、問題解決の糸口や新たな仮説の発見等であることを念頭に置きながら、具体的かつ適切なテーマ設定がされるべきでしょう。
この実例でのテーマは、「企業が求める大学新卒の人材像と大学教育について」と設定したいと思います。

 

2.情報ソースの収集

KJ法的分析における情報ソースは、基本的にはテーマに基づいた意見・感想などの定性データです。
データの収集方法としてよく行われるのは、ブレーンストーミング、グループインタビュー、ヒアリング調査などで、そこで得られた発言データがソースとなります。
ここでは、過去にMarble-Labで実施したヒアリング調査から、先に設定したテーマについて、福岡県下の企業5社の人事担当者からいただいた意見の一部を抜粋して使います。

 

3.カード化

得られた定性情報を、文章として意味が理解できるように要約しながら、そのひとつひとつをカードに記述して分けます。
下の図は、実際にヒアリング調査で得られた5名の人事担当者の発言をカード化したもので、合計19枚の発言カードに分けることができました。

 

 

ここで重要なのが、ひとつのカードの中で複数の意味を持った内容を記述しないことと、わかりやすくするが抽象化し過ぎないことです。

 

4.グルーピング

グルーピングは、まず数枚ごとの小グループ、小グループをまとめた中グループ、そして中グループを含む大グループへと段階を踏んでカードを整理して行きます。
まず、小グループは、それぞれのカードを意味合いが類似しているもの同士で数枚ごとにまとめます。
このとき、あまりたくさんのカードをひとまとめにしようとせず、可能な限り小さな単位でまとめることが重要です。
カードの意味合いをじっくり考えながらの作業ですから、ここがもっとも時間を要するかもしれません。
また、どこにも属しそうにないカードは、無理に整理せずとりあえず未分類のままでOKです。
もしそれらを無理にまとめようとして、カードの意味内容を曲解してしまったら、もはや「KJ法」を行う意味などありませんので。
小グループができたら、そのグループを示すキーワードもしくはタイトルを付けます。

 

 

続けて、小グループを1枚のカードと見なして、さらに意味合いでまとめ、中グループ、そして大グループとグルーピングします。

 

 

上の図で説明すると、点線が中グループで、「学生に求められる資質」と「大学に求められる教育」を囲っている「大学・学生サイド」が大グループです。

 

5.配置・図解(いわゆるA型)

「KJ法」では「A型」といわれる作業です。
各グループを論理的な関連性に従って配置し、線や矢印で相互関係や因果関係を示しながら全体像を図解します。
小グループに分類する際に未分類だったカードも、中・大グループとの関係性などをみながら配置しましょう。
実際に配置と図解を行ったのが下の図です。

 

 

この図でいうと、矢印は作用(影響)、双方向矢印は相互作用(相互関連)を表しています。

 

6.解釈・分析(いわゆるB型)

「KJ法」では「B型」といわれる作業で、先に配置・図解した内容を論説するプロセスです。
「企業が求める大学新卒の人材像と大学教育について」というテーマについて、KJ法的に分析した結果は次のとおりです。

 

テーマ:企業が求める大学新卒の人材像と大学教育について
企業から大学新卒生に求められる資質としては、主に次の5つ。

  1. 基礎的な学力
  2. 「本質」を見抜く力
  3. コミュニケーション力
  4. 人間性を豊かにする経験
  5. 自身の行動を決める意思決定力

基礎的な学力はもとより、「本質」を見抜く力、コミュニケーション力があげられる。
合わせて、単なる学力だけではなく、アルバイト、サークル活動、海外留学など、人間性を豊かにする経験の蓄積や、自身の行動を決める意思決定力も重視されていおり、そのことは本質を見抜く力やコミュニケーション力を培う上でも大切だろう。
大学に求められる教育体制としては、次の3つ。

  1. 学生の興味や可能性の発展
  2. アジアで活躍できる人材
  3. シームレスなカリキュラム

大学の役割は、学生が持つ興味や関心を深められるかが重要であり、興味や関心を探求するための環境やきっかけを拡充させることによって、人間性を豊かにするチャンスを学生たちに与えることになるだろう。
また、海外の学生は、自分の将来を見据えて大学の選択を行なっていることから、高校生に対する進路指導や情報提供も課題なってくるかもしれない。
その他、とくに福岡はアジアの玄関口なので、アジアで活躍できる人材は今後必要とされてくる。
そして、アジアビジネスに目を向けたカリキュラムや海外留学生との活発な国際交流などは、他大学との差別化にとっても重要だと思われる。
他方、IT企業の場合、いくらマネジメント能力があっても、専門的な知識がなければコミュニケーションがとれずグループをまとめられないといった問題が起こる。
そういう意味では、大学で身につけた力が就職先でもロスなく発揮できるような工夫が必要であり、例えば、理工系と文系の学部学科が柔軟に履修できるようなシームレスなカリキュラムにも期待される。
そのためにも企業側がすべき努力は、大学との共同ベンチャーや積極的なインターンシップなどであり、より早い段階で実際の企業現場を学生たちに体感して知ってもらうことが今後ますます必要だろう。

 

KJ法的分析のプロセスは以上です。
データソースの収集を除く作業時間は、6時間程度必要でした。
本来は、もっと時間をかけてじっくりやるべきなのかもしれません。
実際にやってみて強く思ったことは、分析する人間が違えば違う結果になる可能性が非常に高いということです。
それは良い意味で多様性があるということですが、悪い意味では曖昧で科学的とは言いがたいということになるでしょう。
そうなる理由は明確で、カード化、グルーピング、図解、解釈、そのすべての過程において判断基準が主観的であるからです。
つまりは、モデレーターや分析者の経験と能力によって、その内容は相当に変化してしまうと言えます。
とはいえ、定性調査というものは、数値では測れない対象者の本音の把握が目的ですから、それ自体がそもそもきわめて主観的なのですが。
本来の「KJ法」とは違うかもしれませんが、あくまで「KJ法的分析」ということで参考にしてみてください。
機会があれば、定性調査のもうひとつの分析手法であるグラウンデッド・セオリー・アプローチも実例してみましょう。

 

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Notes

  1. 親和図法」とも呼ばれる

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